町長メッセージ2021年度

更新日:2022年06月17日

辰野町産のグラノーラが誕生

先日、上伊那農業高校3年生5名が甘酒移動販売業を営む白鳥杏奈(しろとり あんな)さんと一緒に来庁されました。辰野町小野にある造り酒屋「小野酒造店」から提供された酒粕(さけかす)を使って商品化した「酒粕グラノーラ」を披露してくれました。グラノーラとは牛乳やヨーグルトをかけて朝食やおやつとして食べる今注目の健康食品です。何度も試作をして、酒粕を焼くことで独特のにおいを抑えて風味を引き立たせる方法を見出したそうです。試食すると口の中いっぱいに香ばしさと甘みが広がりました。実に美味しい。衝撃の味でした。

指導役の白鳥杏奈さんは今から6年前にキッチンカーを使った甘酒の移動販売を起業しました。店名は「甘酒屋 an’s(アンズ)」。高校生の時、知り合いのおばさんが振る舞ってくれた甘酒の美味しさに衝撃を受け、人生の方向性が決まりました。研究に研究を重ね、ようやく納得できる甘酒が完成したのが2016年。今から6年前のことです。コロナ禍での営業形態として全国的にも増えている「キッチンカー」の草分け的存在です。ましてや「甘酒」という商品を販売するという、誰も思いつかない分野へ参入したパイオニア的存在でもあります。お米の甘さのみという砂糖は使わない製法で、まろやかな味わいのある手作り甘酒です。

「酒粕グラノーラ」は一袋1,000円。酒粕グラノーラを入れた「酒粕グラノーラフレーバー」は一杯600円で販売しております。ぜひ一度ご賞味下さい。3月は卒業の季節。5名の上伊那農業高校3年生は皆、県内・県外へ進学とのことです。今回の挑戦で得たことを自信にして、夢をもって、力強く歩んでいってほしいと願います。輝かしい未来に幸あれ!

酒粕グラノーラ1

商品化した酒粕グラノーラ

酒粕グラノーラ2

白鳥さんのキッチンカーと上伊那農業高校3年生のみなさん

令和4年3月

辰野町長 武居 保男

梅一輪 一輪ほどの 暖かさ

2月になっても、相変わらず冷え込みの厳しい毎日です。本格的な春の訪れが待ち遠しいこの季節、皆さんいかがお過ごしでしょうか。

 

昨年暮れには、コロナ感染者は全国的にも下火となり収束の兆しも感じられていたのに、年が明けてから事態は急変しました。1日あたりの感染者数は全国的にも、長野県下でも日々過去最高記録を更新。当町でも一気に感染者数が拡大する事態となり、集団感染が確認された保育園・小学校では臨時休業・学級閉鎖等を余儀なくされました。現在も療養されている方やご家族の方には心からお見舞い申し上げ、早期の回復をお祈りしております。

 

先日、身内から感染者が出てしまった方と当時の状況をお聞きする機会が持てました。

まず感染してしまったことに世間の皆さんに対する申し訳なさから自分自身を責めたそうです。そして自宅療養・自宅待機から世間と遮断されたことにより、孤立感が襲う。食事も家にあるものを食べていたが、野菜類が欠乏状態になってしまった。これまでの生活が一変してしまい、精神的にも追いつめられる。自分だけは大丈夫、我が家だけは大丈夫と思っていた(「正常性バイアス」と言います)ことの愚かさを痛感した。そんな時、いろいろな人が救いの手を差し延べて下さった。メールや電話で連絡を取り合い、食糧支援もしていただいた。励ましの言葉を毎日くれて、不安感を取り除いてくれた。徐々に安心感を取り戻し、監禁状態から解放された。日頃の近所付き合い・交友関係がどんなに重要だったか、その大切さを改めて思い知った。今は助けて下さった方々への感謝の気持ちしかないと、涙ながらに語ってくれました。

 

冒頭の「梅一輪 一輪ほどの 暖かさ」は松尾芭蕉の弟子・服部嵐雪(はっとり らんせつ)が詠んだ句です。梅が一輪咲いている。ほのかな春の暖かさが感じられる。待ち遠しい春の訪れに心躍らせる俳句ではありますが、コロナ禍のなか、周りの人々の思いやり・優しさ・心の温かさを感じた話でした。

寒い冬の終わりも、もうすぐです。お互いがんばって乗り切りましょう!

令和4年2月

辰野町長 武居 保男

去年(こぞ)今年(ことし) 貫(つらぬ)く棒(ぼう)の 如(ごと)きもの

大正・昭和の時代に活躍した俳人、高浜(たかはま)虚子(きょし)の有名な句を新年最初の言葉といたします。

テレビのバラエティー番組「プレバト」でおなじみの夏井いつきさんの解説によると、「去年今年」は「新年の季語」で「大晦日の一夜にして去年と今年が入れ替わること、その感慨」の意味だそうです。直訳すれば「去年と今年が入れ替わることは、貫く棒のようなものだ」となりますが、「解釈」はできても問題はどう「鑑賞」するかです。

「棒=大きな時間軸」と捉える人もいれば、「棒=自分の信念」と捉えて「年が替わっても、自分の中には太い信念が貫かれている」と考える人もいます。さらには「棒=虚子の俳句への想い」と捉えて「その想いが、次の時代にも受け継がれていく」と考える人もいます。

虚子のすごさは「貫く棒の如きもの」という抽象的な比喩だけで、一瞬と永遠をあわせ持つ「去年今年」という季語の本質を見事に表現している。年が替わる一瞬を表現しながら、時間が永遠に続いていくイメージも読者に感じさせる。とてつもなく深く大きな句に感じます。

皆さんは、どのようにお感じでしょうか?

 

さて、新しい年を迎えました。辰野町は昨年、コロナ禍にあって、8月大雨災害にも見舞われました。大変な1年でしたが、私たちの住む辰野町は昔から、どんな状況にあっても、みんなで支え合い、助け合うことのできる素敵な町です。この町を守り、創り上げてきてくださった先人の皆さんに感謝しながら、この町をもっともっと「幸せを実感できる、いい町」にしていきたいと思います。今年は4月に「御柱祭」、6月には「辰野ほたる祭り」も予定されています。皆さんと一緒に大いに楽しみたいと思います。

今年が辰野町にとって明るく元気な年となるように、また皆さんにとっても夢と希望のもてる年となりますように祈念して、新年最初のご挨拶とさせていただきます。今年もよろしくお願いします。

新春イベント「初日の出イン・ザ・センター・オブ・ジャパン」

令和4年1月

辰野町長 武居 保男

辰野町が舞台の小説『蛍と月の真ん中で』発刊

師走(しわす)となりました。2021年、令和3年のカレンダーもいよいよ最後、街なかにもクリスマス、年の瀬の雰囲気が漂い始めました。

 

今年は皆さんにとってどのような1年でありましたか?昨年からのコロナ禍で世の中は沈滞ムード。ようやく感染拡大の危機を脱したと思いきや、新たな変異株「オミクロン株」の出現でまたもや不安な日々を送ることになってしまいました。また、この夏当町を襲った「8月大雨災害」の傷もまだ癒えておらず、復旧工事を急いでいる状況です。しかし3カ月にわたり運休が続いていたJR飯田線伊那新町―辰野間の運転が11月15日に再開されました。多くの通勤・通学者が不便を強いられた生活からようやく解放されました。

 

さらにうれしいニュースもありました。

辰野町が舞台の小説「蛍と月の真ん中で」と、著者が辰野町出身者である「虚魚(そらざかな)」が相次いで出版されたことです。

 

11月22日、「蛍と月の真ん中で」の著者、河邉徹(かわべ とおる)さんが来町されました。ロックバンド「WEAVER(ウイーバー)」のドラマーで、写真家、小説家でもある河邉さんは激しいロックミュージシャンとは思えない、物腰低く、優しさ、気品、感性の豊かさが漂う実に好青年でありました。新たな価値観を教えてくれた辰野町、また辰野の方たちに感謝の気持ちでいっぱいですと話されました。蛍にちなんで作られた新曲「光とよぶもの」も素敵な曲です。本も読んで、曲もぜひ聴いていただきたいと思います。来年のほたる祭りでの再会を約束いたしました。

「蛍と月の真ん中で」(ポプラ社)

辰野町の印象を話す河邉さん

小説「虚魚(そらざかな)」は辰野町出身の新名智(にいな さとし)さんが執筆しました。この本で新人文学賞「第41回横溝正史ミステリ&ホラー大賞」(KADOKAWA主催)を受賞しました。辰野町の山中で遊んだ経験を思い起こしながら書かれたそうです。新名さんともお会いできることを楽しみにしております。

 

輝かしいご越年を心よりお祈り申し上げ、今年最後の「町長のページ」を終わります。この1年大変お世話になりました。ありがとうございました。

令和3年12月

辰野町長 武居 保男

令和3年8月大雨災害 国土交通大臣が来町

平成18年豪雨災害から15年目を迎えたこの夏、辰野町をはじめ県内各地で大きな災害に、再び見舞われました。

隣接の岡谷市で発生した土石流によって辰野町内在住の母子3名の尊い命が奪われました。深く大きな悲しみに町が包まれました。心からご冥福をお祈りするとともに、衷心より哀悼の意を表します。

今回の大雨は、平成18年豪雨災害に次ぐ観測史上2番目の雨量を記録しました。町内の至るところで、土砂の流出や河川の氾濫が発生し、住宅等の建物、道路河川、上水道、農地など甚大な被害が発生しました。

また、通勤通学の重要な交通手段である鉄道も寸断。JR中央東線の辰野駅・岡谷駅間、辰野駅・塩尻駅間は運行が先日再開したものの、JR飯田線の辰野駅・伊那新町駅間は未だ不通のままで、バスによる代替輸送が行われている状況です。崩れた鉄橋の修復作業にまだまだ長い時間がかかります。

さる8月29日には赤羽国土交通大臣が被災箇所の現場視察のため来町されました。あまりに大きな被害を受けた当町の窮状を訴え、国の強力なご支援をお願いしました。

地域の皆さんの献身的な活動

赤羽国交大臣(左)に要望書を手渡す

災害発生時、避難所開設から応急対応にあたっていただいた各区役員の皆様、建設重機等で懸命な作業をしていただいた町内建設関連業者の皆様、消防署、警察署、消防団、日赤奉仕団、民生児童委員の皆様のご尽力に心から感謝申し上げます。長引く災害復旧に各地から駆けつけてくださった災害ボランティアの皆様、県社協はじめ上伊那郡各市町村の社協の皆様にも大変お世話になりました。また全国各地の皆様から災害募金の形で温かい支援の手が差し延べられました。涙が出るほど嬉しく感謝の気持ちでいっぱいです。

まだまだ復旧・復興の途上にありますが、多くの皆様から「今日頑張れる元気」をいただきました。町民力を合わせて頑張ってまいります。本当にありがとうございました。

令和3年9月

辰野町長 武居 保男

第73回信州辰野ほたる祭りが閉幕

6月12日(土曜日)に開幕した「第73回信州辰野ほたる祭り」は6月20日(日曜日)にひっそりと閉幕いたしました。ここでなぜ「ひっそりと」という表現をしたかというと、数々の華々しいイベントを打ち上げたわけでなく、徹底して新型コロナ感染拡大防止に配慮したお祭りであったからです。昨年は、初めて開催を中止。今年もいまだ収束が見えない中、「密」を避けるためホタルの鑑賞は辰野町に在住、在勤、通学者に限ることとさせていただきました。そして見ることのできない方のために、ホタルの発生状況をライブ配信するなど、今年は「おうちでほたる祭り」を合言葉に初めて企画いたしました。パソコンの画面でホタルの乱舞を十分楽しめたとのお声も頂きましたが、実は今年のホタルの発生がすごかった!おそらく史上最大のホタルの乱舞でありました。

 

写真家・随筆家でもある辰野町観光協会長の中谷勝明氏が撮影した写真をここでご紹介いたします。

ホタルの絨毯(じゅうたん)

ホタルの光跡

今、世の中はコロナの影響で不安と混乱の日々が続いています。しかし、辰野町のホタルたちは一生懸命輝きを放ち、仲間たちと楽しそうに踊っています。私たちはそんなホタルによって励まされ、元気づけられております。

来年の今頃は、ぜひ全国の多くの皆さんに「辰野ほたる祭り」へお越しいただけることを願っています。

令和3年7月

辰野町長 武居 保男

今年は「おうちでほたる祭り」

6月は辰野町民にとって1年で特別な月・・・。毎年この時期になると辰野の里山、川辺に蛍がいっせいに乱舞します。駅前商店街には100軒を超す夜店が建ち並び、歩行者天国やお祭り広場では様々なイベントが繰り広げられます。毎年20万人もの人々が全国各地から訪れる町の一大イベント「辰野ほたる祭り」の季節となりました。島倉千代子さんが歌う「ほたる小唄」は昔から町民に親しまれている曲です。さだまさしさんが昔訪れたときにつくった曲「風の篝火(かがりび)」(CD「夢供養」に収録)は名曲の呼び声高く、水森かおりさんが歌う「辰野の雨」(CD「ひとり長良川」に収録)もぜひ皆さんに聴いていただきたい曲です。

 

今年で73回目を迎える「辰野ほたる祭り」は6月12日(土曜日)~6月20日(日曜日)までの9日間開催されます。しかしながら未だ収束しない新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、昨年の開催中止に続き、今年もかなり規模縮小した形での開催となります。歩行者天国も露店出店もございません。蛍鑑賞も町内在住、在勤、在学生の方に限定させていただきます。感染防止対策を徹底し、「密」を避けるためです。楽しみにされていた皆さんには非常に申し訳ない気持ちでいっぱいでありますが、なにとぞご容赦ください。なお、今年は「おうちでほたる祭り」を合言葉に蛍の発生状況をライブ配信することを企画しております。辰野町のホームページをぜひご覧ください。

 

来年こそは全国大勢の皆さんに「日本一の蛍の乱舞」をお楽しみいただけることを願っております。今年の蛍も命をつなぎ、来年の蛍がきっと皆さんのお越しを待っていてくれるはずです。心よりお待ちしております。

令和3年6月

辰野町長 武居 保男